『アニー』劇中 人名&用語辞典<後編> ~【THE MUSICAL LOVERS】ミュージカル『アニー』【第22回】

コラム
舞台
2018.4.9


【THE MUSICAL LOVERS】
 Season 2 ミュージカル『アニー』
【連載第22回】『アニー』劇中 人名&用語辞典<後編>

前回はこちら

丸美屋食品ミュージカル『アニー』が2018年4月21日より開幕する。観劇に際して、登場するキャラクターや用語を予習・復習しておきたいもの。そこでお届けするのが「『アニー』劇中人名&用語辞典」である。

物語の舞台は1933年、クリスマスシーズンのニューヨーク。<前編>  では第一幕(1933年12月11日~19日)に出てくる人名・用語を解説したが、今回の<後編>では第二幕(1933年12月21日~25日)を、場面ごとに追っていく。

<記号説明>
●=物語に出演する人・犬
〇=物語に出演する物
★=物語に名前のみ出てくる人
☆=物語に名前のみ出てくる物

<ラジオのスタジオ・孤児院>

♪楽曲「Maybe(Reprise II)」「(You're Never)Fully Dressed Without a Smile」「(You're Never)Fully Dressed Without a Smile (Children Reprise)」「Easy Street" (Reprise)」(作詞:マーティン・チャーニン、作曲:チャールズ・ストラウス)

●効果音係 Sound Effects Man

第二幕開始前に劇場の観客をラジオ番組の見学客に見立てて盛り上げるほか、ラジオ番組内の足音やドアの音の効果音を担当(【第10回 】参照)。

〇『スマイル・アワー』 The Oxydent Hour of Smiles

アニーとウォーバックスが出演した、オキシデント社(歯磨き粉会社)提供のラジオ番組。NBCレッド・ネットワーク(現在のNBCラジオ・ネットワーク)にてオンエアされている。全米ナンバーワンの人気を誇り、アメリカ合衆国民の約半数が聴いているといわれるため、アニーの両親または知り合いが聴く望みをかけて出演した。ウォーバックスは最初「番組のイメージが合わない」と出演を断られたが、怒ったウォーバックスがすぐにオキシデント社を買い取って出演したという説もある(【第14回】参照)。

●バート・ヒーリー Bert Healy

『スマイル・アワー』で、 カリスマ的な人気を誇るラジオ・パーソナリティー。この役、日本では2001年~2017年までずっと、俳優・矢部貴将が演じてきた。はたして2018年は……。

●ボイラン・シスターズ Boylan Sisters (Connie, Ronnie, Bonnie)

『スマイル・アワー』名物、コニー、ロニー、ボニーの3人組シンガー。バート・ヒーリーとともに番組テーマソングを歌う。「シスターズ」というわりには、本当の姉妹ではなく、「姉妹という設定」の3人組のようだ。ブロンドヘアの彼女たちがセクシーに伝えるオキシデント社のコピーは「あなたの歯に、ハリウッドの輝きを」。『アニー』脚本のトーマス・ミーハン自身が手掛けたノベライズ本(以下、ミーハン本)には、当時実在のハリウッド女優フランシス・ディー、フランシス・ファーマー、ケイ・フランシスがオキシデント社の歯磨き粉を愛用している(だから「ハリウッドの輝き」なのだ)、という設定が記されている。

●ジミー・ジョンソン Jimmy Johnson

『スマイル・アワー』に登場する、ラジオ界唯一の覆面アナウンサー(DJ)。

●プロデューサー Producer

『スマイル・アワー』の責任者。番組内ではキュー出し等を担当している。

●〇フレッド・マクラケンとワッキー Fred McCracken & Wacky

『スマイル・アワー』に登場する、腹話術人形術師フレッド・マクラケンと相棒の木製人形ワッキー。英語では、ワッキーのことは、フレッド・マクラケンの「dummy」と説明されている。ただし、マクラケンのダミー(替え玉)という意味ではなく、腹話術用の人形は一般的に「dummy」と呼ばれる。マクラケンとワッキーがお揃いの服を着せたりする洒落た演出が見られることもある。

☆5万ドル 50,000 dollars

『スマイル・アワー』に出演したウォーバックスは、「アニーの両親だと証明できた人に、5万ドルの(銀行の支払い保証付き)小切手をさしあげる」と告知した。ミーハン本によると、「現在(2013年)の価値で数百万ドル」(2018年現在において百万ドルは日本円にして1億円前後)とのこと。

<ホワイトハウス>

♪「Tomorrow(Cabinet Reprise)」「Tomorrow (Cabinet Reprise II)」

〇ローズベルト大統領が聴いているラジオ A news Commentary on the radio

ホワイトハウスのシーンでは、まず、CBS局ラジオのニュースが聴こえてくる。声の主はH.V.カルテンボーン。当時のアメリカ合衆国で一番有名なラジオのニュースキャスターである。彼がドイツなまりでまくしたてる。「ローズベルト大統領(【前回】 参照)は、選挙時の掲げた公約(ニュー・ディール政策)を成し遂げるために、学識経験者を集めて顧問団(brain trust)を組織した。しかし顧問団とローズベルト大統領は、おおげさな議論だけで何一つ実行に移していない」と。

ちなみに【前回】 解説したとおり、実際の史実ではローズベルトは大統領就任当時から施行している。また、同大統領は「おしゃれは笑顔から」と語り、ラジオ番組『スマイル・アワー』愛聴者であることをにおわせる。ローズベルト大統領とラジオは切っても切れない関係にある。というのも、彼はラジオで「炉辺談話(fireside chat)」という番組を持っていた。くつろいだ雰囲気で国民に語りかける政権談話を得意とした大統領として、ラジオという当時最大のマスメディアを利用していたのである。

☆ワシントン・ポスト The Washington Post

ホワイトハウス(【前回】 参照)があるワシントンD.C.で発行されている有力地方新聞。

〇「唯一恐れなければならないのは、恐れそのものだ」 "The only thing we have to fear is fear itself."

元々は1933年3月のローズベルト大統領就任演説での言葉。ミーハン本では、アニーが孤児院を1年間脱走中しており、その間、脱走先の食堂のラジオから流れたこの言葉を、アニーも聴いている。

●海軍護衛官 A Marine guard

ウォーバックスとアニーが到着したことをローズベルト大統領に告げ、案内する。また、アニーとウォーバックス宛に電報を届ける。

〇「アメリカ人の本業はビジネスにあり」 "The business of America is business."

ウォーバックスが「クーリッジ大統領(【前回】 参照)の言葉を借りれば」と言えば、周囲の閣僚が「アメリカ人の本業はビジネスにあり」と続けるほど有名な言葉(【第11回】 参照)。クーリッジは、ウォーバックスと同じ共和党であり、1924年から1929年まで合衆国の第30代の大統領をつとめた。この次に大統領に就任するのがやはり共和党のフーバー(フーバービルのフーバー)である(その次が民主党のローズベルト)。クーリッジの失政も少なからず世界大恐慌の原因を作っている(【第11回】 参照)。

★アル・カポネ Al Capone

ホワイトハウスの中で怒号が飛ぶ。「FBIはまだ、アル・カポネに手を焼いているのか!」 アメリカ合衆国では、1920~1933年に禁酒法が施行されていた。アル・カポネはその禁酒法の時代、密造酒の製造・販売、さらに売春や賭博など非合法の犯罪組織を飛躍的に拡大させたギャングのボスだった。かような悪を暗躍させる禁酒法の廃止を公約に掲げて第32代の大統領に当選し、就任後すぐに実行に移したのがローズベルト大統領である。

ただし、FBIの呼称は1933年にはまだない(【前回】 参照)。さらにはアル・カポネは1931年3月、FBIではなくエリオット・ネス率いる財務省・酒類取締局によって逮捕されている(【第11回 】参照)。つまり1933年12月の時点では、アル・カポネの捜査・逮捕劇は終了しているのだ!

ちなみにミーハン本では、FBIが手を焼いているのは「アル・カポネ」ではない。本当にFBIに追われていたのは、社会の敵ナンバーワンの犯罪王「ジョン・ディリンジャー(John Herbert Dillinger Jr.)」となっている。いずれにせよ、FBIという呼称はないけれど……。

〇「ここはまだ、自由の国だよ」 "It's still a free country, with free speech."

1933年はドイツでナチスのアドルフ・ヒトラーが首相に就任、憲法を事実上停止して敵対勢力を排除、ファシズム政権を樹立させた年でもある。アメリカ合衆国は「いつドイツと戦争になってもおかしくない」という警戒心に満ちていた(【第5回】 参照)。ローズベルト大統領はアニーに、「ここ(アメリカ合衆国)はまだ、自由に意見を言える国だよ」に続けて「ドイツのように権力者に物を申しても、逮捕されないよ」と言いたかったのだろう。

『アニー』の物語よりもさらに先の話になるが、ローズベルト大統領は1941年1月6日、演説において、"The Four Freedoms"(4つの自由)の理念を宣言した。Freedom of speech(言論の自由)・Freedom of worship(崇拝の自由)・Freedom from want(欲望からの自由)・Freedom from fear(恐怖からの自由)である。これもアニーに出会った影響なのか?

●ハロルド・イッキーズ Harold Ickes(※ホワイトハウスに登場する閣僚については【第5回】  【第11回】 参照)

内務長官。短気な性格。ローズベルト大統領から「歌え」と指名される。ホワイトハウス内で歌い出すこと、政治と関係ないアニーが会議に参加することに難色を示しつつも結局は歌い出し、最終的には失業者の雇用・公共事業拡大を提言する。

●コーデル・ハル Cordell Hull

国務長官。関心分野は外交のため、国内の失業問題を「長い目で見よう」と述べる。それよりもドイツから戦争を仕掛けられることを懸念している。しかしローズベルト大統領に「飢えている人にとっては、長い目も何もないんだ」とたしなめられ、「ヒトラーにも負けない国づくりをしよう」と、国内の士気を高める政策に賛同。

『アニー』の物語よりもさらに先の話になるが、ABCD包囲網(米英中蘭の対日貿易制限)により経済的苦境に立たされていた日本は、対米交渉において「ハル・ノート」と称される強硬な最終通告書を突きつけられ、それを拒否。これがきっかけで1941年12月の真珠湾攻撃(日米開戦)へと至った。その「ハル・ノート」こそ、ハル国務長官によってまとめられた文書であり、その一部はヘンリー・モーゲンソウ財務長官(後述)の私案を叩き台にしたものだった。

●ルイス・ハウ補佐官 Louis Howe

ローズベルト大統領の側近で特別経済顧問。ローズベルトの親友。

●ヘンリー・モーゲンソウ Henry Morgenthau, Jr.

財務長官。ダムの建設を提言し、「労働者に給料を払えば、税金に回る」と発言。『アニー』劇中では、ウォーバックスと仲が良いようだ。コーデル・ハル(前述)がまとめた「ハル・ノート」の叩き台を作った。

●フランシス・パーキンズ Frances Perkins

アメリカ合衆国初の女性閣僚。政権の労働長官となり、社会保障、失業保険、児童労働を規制する連邦法、連邦最低賃金の採用などニュー・ディール政策の基礎固めを担った。

●★大統領のアドバイザー

「大統領の良きアドバイザーになれる」とローズベルト大統領に言われるアニー。劇中にその名が出てくる実際のアドバイザーは、ブランダイス判事(後述)と、バーナード・バルーク(【前回 】【第12回】参照)。

☆ニュー・ディール政策 New Deal

ローズベルト大統領が行なった新規巻き直し政策。最初は失業者救済のための公共事業拡大で「救済」。次に経済を「回復」。その後は労働関係法などの社会保障制度、税制、銀行制度などの社会「改革」を行なった。しかし1939年に第二次世界大戦が勃発、1941年12月の真珠湾攻撃(日米開戦)によって戦時体制となり、全ての完遂はされなかった。

しつこいようだが、アニーによってニュー・ディール政策が誕生したわけではない。当連載でも【第5回】 から【前回】まで何度も述べているが、史実においてニュー・ディール政策は大統領選挙時からの公約であり、1933年12月にはとうに実行に移されていた。

ちなみに原作コミック『小さな孤児アニー』の作者ハロルド・グレイは、「政府の犬になって肥えるくらいなら、貧しくとも自立せよ」の精神を持ち、政府の介入=ニュー・ディール政策を良しとしなかった(【第7回】  参照)。ただし原作コミックから取った設定は「世界一貧しい少女」「世界一金持ちの男」「犬のサンディ」だけで、ミュージカルでのストーリーはトーマス・ミーハンの創作である(【第4回】 参照)。

<ウォーバックス邸>

♪「Something Was Missing」「Annie」「I Don't Need Anything But You」「Maybe (Reprise III) 」「New Deal for Christmas」「Tomorrow (Finale)」

☆ブロンクス The Bronx

アニーの両親探しの結果、ウォーバックスの秘書グレースが「マンハッタン島にこんなに嘘つきがいるなんて」と言う。すると執事ドレークが「ブロンクスから来た者もいましたよ」と返す。場所は以下の通り。

赤で囲ってあるのがマンハッタン島、赤い点がウォーバックス邸。東側にブロンクスが見える。

赤で囲ってあるのがマンハッタン島、赤い点がウォーバックス邸。東側にブロンクスが見える。

赤で囲ったブロンクスの範囲はかなり大きい。

赤で囲ったブロンクスの範囲はかなり大きい。

☆蒋介石夫人(宋美齢) Soong Mei-ling

「(養子縁組のパーティーに)誰を呼びたい? ベーブ・ルース? ロックフェラー? 蒋介石夫人?」 2017年新演出から加わったウォーバックスのセリフ。ベーブ・ルース、(ジョン・D・)ロックフェラーについては【前回】 参照。蒋介石夫人(宋美齢)は浙江財閥の創始者にして孫文を支援した大富豪・宋嘉樹の三女。長女・宋靄齢(孔祥熙夫人)、次女・宋慶齢(孫文夫人)と共に「宋家の三姉妹」として知られる。1908年(9歳)から大学を卒業する1917年までアメリカに留学していた。1927年、宋美齢と蒋介石の結婚はニューヨーク・タイムズの一面を飾り、『アニー』に名前が出てくる1933年の時点でニューヨークでは既に大変なセレブリティで、「Madame Chiang Kai-shek」または「Madame Chiang」と呼ばれていた。「ウォーバックスはなぜ蒋介石夫人をパーティーに呼びたがるのか」については、【第12回】  参照。

補足説明! アニーは「(養子縁組のパーティーに)誰を呼びたい? 」と問われる前に、「ウォーバックスさんは何だって持ってる。壁にかかったデューセンバーグ……ベーブ・ルース」と言っている。つまりアニーはデューセンバーグデューセンバーグ(【前回】 参照)を車だと知らないし、ベーブ・ルース(【前回】 参照)を人名だとわかっていない。それゆえウォーバックスは、1933年時点でヤンキースの花形野球選手である「ベーブ・ルース」を招待したいと思ったのだろう。

ちなみにミーハン本では、この「誰を呼びたい?」の後は「ジョン・D・ロックフェラー? クラーク・ゲーブル? ハーポ・マルクス? ベーブ・ルース?」となっている。【第14回】  でも説明したとおり、クラーク・ゲーブル(Clark Gable)もハーポ・マルクス(【前回】 参照)も有名な映画俳優。ミーハン本では、ウォーバックスは映画好き、という設定なのだ。

●ルイス・ブランダイス判事 Louis Dembitz Brandeis

1933年の時点で77歳の、合衆国最高裁判所判事であり、ローズベルト大統領の私的アドバイザーも務めていた。ニュー・ディールの主な立法を合憲と認め、法律家の立場から大統領の政策を支えた大物である。

アニーと養子縁組の手続きをしたいウォーバックスが、執事ドレークにブランダイス判事を招くよう命じる。そして執事ドレークに「ブランダイス判事がお見えです」と紹介され、「Annie」の曲で華々しく登場する。ブランダイス判事は言う。「養子縁組の手続きはとても簡単だ。ニューヨーク州の法律で……」 これほどの大物法律家に対して、大富豪ウォーバックスはアニーとの私的かつ「簡単」な養子縁組の手続きを依頼したのである(【第12回】 参照)。

〇「ニュージャージーの小さな農場(養豚場)を覚えているかい?」 "Remember the little pig farm out in New Jersey?"

アニーの両親(?)と思われる人物が、ウォーバックス邸にやって来る。「アニーの両親だと証明できた人に、5万ドルの(銀行の支払い保証付き)小切手をさしあげる」ことは知らない風情だ。ただ、貧乏であるよりもお金があったほうがアニーにいい暮らしをさせられる、と主張する父親が、母親に向かっ言うセリフが「ニュージャージーの小さな農場(養豚場)を覚えているかい?」。

両親が見つかり、夢が叶って嬉しいはずのアニーだが、独りになって歌うのは、「Maybe (Reprise Ⅲ) 」。ここは【第7回】で紹介したCD『アニー オリジナル・ブロードウェイ・キャスト』のボーナストラック内「バッカーズ・オーディション」音源によると、もともと「I've Never Been So Happy」という浮かれた曲だった。しかしアニーは、これから田舎で厳しい生活が待っていることは明らかだ。貧しさは5万ドルをもらえば解決されるとはいえ、せっかく心を通わせたウォーバックス邸の人たちと離れ離れになってしまう(【第8回 】参照)。その複雑な気持ちに気づくきっかけになるセリフだ。

〇「ゲーム・オーバー」 "The jig is up."

アニーの両親(ニセ者)に向けられるセリフ。旧演出では「全て終わり」「全ておしまい」と翻訳されていた箇所だ。「策略はもうおしまい、もうダメだ」という意味の言葉で、ウォーバックスやローズベルト大統領側が使うと「あなた達のしたことは、もうバレていますよ」という意味にもなる。"The game is up(upはoverと同じ意味)"とも言い換えができるので、「ゲーム・オーバー」の訳がドンピシャである。また、ここをここを「ゲーム・オーバー」と訳すことで、第二幕のオーバーチュアの出だしが、壮大なゲーム音楽っぽいアレンジになっている、と筆者は感じた。

〇「ハニガンとは二度と会うことはないぞ」 "Miss Hannigan is gone for good."

旧演出では「ミス・ハニガンは永久に戻ってこないぞ」と翻訳されていた箇所。永遠に(for good)いなくなる、という意味だが、2017年新演出ではハニガンたちの服装が天使のようだった。これは「死」なのか、「クリスマス劇(ページェント)」における天使なのか? ちなみにミーハン本(英語)では「Miss Hannigan is gone for good - to jail(刑務所へ)」となっている。ただしそれは事実なのか、本当は死んでいるのにウソをついているのかは不明。

〇「ノーモア・どろどろ!」 "No more mush!"

トウモロコシの粉を水で煮た「どろどろスープ(mush)」は、孤児院で出されているマズい食事だ。ミーハン本によると、孤児たちにとっては、孤児院をおさらばできることよりも、マッシュとお別れできることが、「いちばんすばらしいニュース」と記されているほどで、『アニー』終盤の有名なセリフである(【第13回 】参照)。

ちなみに旧演出に「ノーモア・どろどろ!(No more mush!)」のセリフはなく、ウォーバックスが秘書グレースに「結婚してくれないか」とプロポーズするシーンとなっていた。2017年の新演出では、ウォーバックスからのハッキリしたプロポーズはなかったが、心を通わせる2人をニヤニヤと見守るアニーの表情が印象的だった。


さて、第二幕のラストは、「New Deal For Christmas」。「光と愛のクリスマス」と歌われているこの曲は、「New Deal」という言葉どおり、本来はローズベルト政権の様相を歌った曲である(【第5回】 参照)。2017年の新演出から、貧民バラック街・フーバービルの人たちがアニーを評する言葉は「1928年以来の楽観主義」(【第4回】参照)にかわり、「希望」と訳された(【第12回】参照)。これによって「今こそ取り戻す もう一度 希望を」「希望と愛のクリスマス」という歌詞が生きる。希望はニュー・ディール政策だけではない。「アニーを取り戻した我々が、もっと希望を持って生きられるようになった」という意味も込められたように、筆者は感じるのだ。


参考文献:・リアノー・フライシャー著 山本やよい訳『アニー』(1982年、早川書房)
・トーマス・ミーハン著 三辺律子訳『アニー』(2014年、あすなろ書房)
・Thomas Meehan『Annie -A novel based on the beloved musical!-』(2013年、Puffin Books)
・CD『アニー オリジナル・ブロードウェイ・キャスト』ブックレット内 歌詞およびライナーノーツ(2004年、ソニーミュージック)


文:ヨコウチ会長


 
☆ミュージカル『アニー』に関して、もっと知りたい方は、当連載をご参照ください↓☆
<THE MUSICAL LOVERS ミュージカル『アニー』>
[第1回] あすは、アニーになろう 
[第2回] アニーにとりつかれた者たちの「Tomorrow」(前編) 
[第3回] アニーにとりつかれた者たちの「Tomorrow」(後編)
[第4回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その1>フーバービル~
[第5回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その2>閣僚はモブキャラにあらず!/span>
[第6回] アニーの情報戦略
[第7回] 『アニー』に「Tomorrow」はなかった?
[第8回] オープニングナンバーは●●●だった!
[第9回] 祝・復活 フーバービル! 新演出になったミュージカル『アニー』ゲネプロレポート
[第10回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その3>ラヂオの時間
[第11回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その4>飢えた人々を救え!
[第12回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その5>ウォーバックスにモデルがいた?
[第13回] ブラックすぎる!? 孤児院の実態
[第14回]ウォーバックスの財力と華麗なる元カノ遍歴
[第15回]Leapin' Lizards! リメイク映画『ANNIE』のトリビア<前編>
[第16回]Leapin' Lizards! リメイク映画『ANNIE』のトリビア<後編>
[第17回]ミュージカル『アニー』2018の主役&孤児役合格者、発表! 新アニー役は新井夢乃&宮城弥榮!
[第18回]決まったぞ~! ハニガン役に辺見えみり、グレース役に白羽ゆり!丸美屋食品ミュージカル『アニー』大人キャスト
[第19回]サンディが33年目にして犬種チェンジ! 丸美屋食品ミュージカル『アニー』
[第20回]新旧演出版のアニーたちが最後の共演!「丸美屋食品ミュージカル『アニー』クリスマスコンサート2017」レポート
[第21回]『アニー』劇中 人名&用語辞典<前編>
[第22回]『アニー』劇中 人名&用語辞典<後編>
[第23回]パワーアップする2018年『アニー』~演出の山田和也にインタビュー

次回に続く

公演情報

丸美屋食品ミュージカル『アニー』2018
 
【東京公演】
■日程:2018年4月21日(土)~5月7日(月)
■会場:新国立劇場 中劇場
■チケット発売:2017年12月16日(土)
■料金:全席指定8,500円
※4月23日(月)・24日(火)は特別料金「スマイルDAY」全席指定6,500円
※4月25日(水)13時公演 / 17時公演は「わくわくDAY」
(観客全員に『アニーのくるくるウィッグ』『オリジナルエプロン』『非売品バッジつきミニバッグ』『キャップ』の中から1点をもれなくプレゼント)
 
【福岡公演】
■日程:2018年8月4日(土)~8月5日(日)
■会場:福岡市民会館
 
【大阪公演】
■日程:2018年8月9日(木)~8月14日(火)
■会場:シアター・ドラマシティ
 
【新潟公演】
■日程:2018年8月26日(日)
■会場:新潟テルサ
 
【名古屋公演】
■日程:2018年8月31日(金)~9月2日(日)
■会場:日本特殊陶業市民会館
 
■出演:
アニー:新井 夢乃 / 宮城 弥榮
ウォーバックス:藤本隆宏
ハニガン:辺見えみり
グレース:白羽ゆり
ルースター:青柳塁斗
リリー:山本紗也加 
ローズベルト大統領:伊藤俊彦
男性アンサンブル:伊藤広祥、大竹 尚、鹿志村篤臣、谷本充弘、森 雄基、矢部貴将
女性アンサンブル:岩﨑ルリ子、神谷玲花、川井美奈子、坂口杏奈
 
<チーム・バケツ>
アニー役:新井 夢乃 (アライ ユメノ)
モリー役:尾上 凜 (オノエ リン)
ケイト役:歌田 雛芽 (ウタダ ヒナメ)
テシー役:音地 美思 (オンジ ココロ)
ペパー役:田中 樹音 (タナカ ジュノン)
ジュライ役:山下 琴菜 (ヤマシタ コトナ)
ダフィ役:藤田 ひとみ (フジタ ヒトミ)
ダンスキッズ:
大川 惺椰 (オオカワ セイヤ)
大谷 紗蘭 (オオタニ サラ)
大星 優輝 (オオホシ ユウキ)
齊藤 芯希 (サイトウ シキ)
平井 蒼大 (ヒライ ソウタ)
山中 莉緒奈 (ヤマナカ リオナ)
 
<チーム・モップ>
アニー役:宮城 弥榮 (ミヤギ ヤエ)
モリー役:島田 沙季 (シマダ サキ)
ケイト役:込山 翔愛 (コミヤマ トア)
テシー役:林 歩美 (ハヤシ アユミ)
ペパー役:武藤 光璃 (ムトウ ヒカリ)
ジュライ役:河﨑 千尋 (カワサキ チヒロ)
ダフィ役:山本 樹里 (ヤマモト ジュリイ)
ダンスキッズ:
東 未結 (アヅマ ミウ)
高橋 奈々 (タカハシ ナナ)
髙橋 有生 (タカハシ ユイ)
田中 愛純 (タナカ アズミ)
廣瀬 奏空 (ヒロセ ソラ)
宮原 咲心 (ミヤハラ ニコ)​
 
■主催・製作:日本テレビ放送網株式会社
■協賛:丸美屋食品工業株式会社
■公式サイト:http://www.ntv.co.jp/annie/
<特番>
ズムサタプレゼンツ!きっと誰かに話したくなる意外な“へぇ~”満載春のアニー祭り
■日本テレビ 4月14日(土)10:30
■テレビ新潟 4月28日(土) 10:30
■福岡放送 5月3日(木) 10:25
■讀賣テレビ 5月4日(金) 9:30
■中京テレビ 6月9日(土) 10:30
□CS日テレプラス 4月27日(金)14:30、4月28日(土)6:00、5月2日(水)6:30、5月2日(水)19:00
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