トニー賞10冠の話題のミュージカル『バンズ・ヴィジット』日本初演に挑む、風間杜夫&濱田めぐみ対談インタビュー
――風間さんは2018年の『リトル・ナイト・ミュージック』にご出演するまでは、ミュージカルを封印していらっしゃったそうですね。
風間:封印も何も、僕の恩師であるつかこうへいさんに「日本で一番踊っちゃいけない役者」と言われていたんですよ(笑)。歌うほうは、上手い下手は別として、カラオケで吠えていた経験があるのでね。ただ、大竹しのぶさん主演の『リトル・ナイト・ミュージック』という作品はミュージカル界でも一番難曲と言われるスティーブン・ソンドハイムの楽曲だったので、まあ手こずりました。家に帰って一人で特訓しましたよ。酒飲みながら特訓していると、段々上手くなっていくように錯覚していくんですよね(笑)。そんな毎日だったので、命を縮めるようなことはもう二度とやるまいと決めていたんです。そうしたら今回は歌わなくていい、踊らなくていいと。そういう約束で出演を決めました。だから絶対に歌いません(笑)。
濱田:今の時点での私の勘ですが、これまでのミュージカルとはちょっと違ったアプローチをした方がこの作品にはフィットするのかな、と思っているんですよね。ミュージカルって心の叫びを歌い上げるみたいなイメージがありますが、この作品では「思っていることが口から出たらたまたまメロディーになっていた」というイメージの方がいいのではないかと思って。具体的にはまだわからないんですけれど、今までの感じとは違う方向性で攻めてみるのもありかなと思っています。
――そういう歌ということですし、風間さんのトゥフィーク隊長も1曲は語るような歌があったかと思うのですが……。
風間:う〜ん、そうですねえ。さっきは「ない」と言い切りましたけど、ないとなると私も寂しいですから(笑)。掛け合いでもいいので、ちょこっとは歌えたらなと。語るような歌というのは浪曲みたいな感じですか? 三波春夫の長編歌謡浪曲なら得意なんですけど(笑)。
濱田:本当に喋っているような感じだったと思います。
風間:そうですか。じゃあやりましょう!
濱田:よかった〜(笑)。
――本作は2018年にトニー賞10部門受賞という快挙を遂げた作品でもあります。トニー賞でのパフォーマンス「Omar Sharif」をご覧になった感想を聞かせてください。
濱田:多分「なぜこの曲を?」ってみんなが思ったと思うんですけど、観たら「なるほど〜」と思わされましたよね。
風間:ほほう、どんなパフォーマンスでしたか?
濱田:すごくノスタルジックな感じなんです。ディナが隊長さんとバーで語らっていて、彼女自身の昔話をしている場面。ディナがまるで子守唄のような曲を歌うんです。聴いていると力が抜けていってホッとして、中東独特のニュアンスの摩訶不思議な世界観が広がっているんですよね。「ラーララーララーラーララ〜♪」という耳に残るメロディが延々と続くという。この曲をトニー賞のパフォーマンスに選んだということにびっくりしました! でもみんな魅了されていましたよねえ。私も「この曲何だろう」って調べて『バンズ・ヴィジット』という作品に辿り着いたんです。そんな不思議な曲があるので、楽しみにしていてくださいね。
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