新旧演出版のアニーたちが最後の共演!『アニー』クリスマスコンサート2017」レポート~【THE MUSICAL LOVERS】Season 2 ミュージカル『アニー』【第20回】
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「メイビー」を歌う3人のアニー。それぞれのアニー服が可愛い!
「丸美屋食品ミュージカル『アニー』クリスマスコンサート2017」(通称:クリコン)が、2017年12月22日(金)・23日(土・祝)に行われた。上演された最新年(2017年)とその前年(2016年)のアニー&アニーズがショーを担当、最後に翌年(2018年)のアニーズをお披露目するクリコンは、日本『アニー』独自の伝統文化だ。筆者にとっても、2016年・2017年・2018年の『アニー』を取材し続けているので(※本頁「公演記録」下の注記を参照)、思い入れもひとしおである。
今回は2016年・2017年・2018年のアニー&アニーズ、2017年・2018年ウォーバックス役の藤本隆宏、2017年秘書グレース役の彩乃かなみに加え、1995年アニー役の水野貴以、1997年シャーリー役・2001年ダフィ役の清水彩花、2006年アニー役の服部杏奈という、ミュージカル界で活躍する『アニー』卒業生3人が出演した。そのステージがあまりにも素晴らしかったので、メモリアルをかねてレポートさせていただく。
2017年、ミュージカル『アニー』は山田和也による新演出となった。そしてクリコンも、これまではオリジナルのストーリーが展開される中で『アニー』の楽曲やクリスマスソングを披露、という形から一新し、コンサート形式となった。そしてミュージカル『アニー』の本編と同様、佐橋俊彦が音楽監督を、福田光太郎が指揮をつとめた。構成・演出は小川美也子、振付は小山みゆき、タップ振付は藤井真梨子。
今回の見どころのひとつは「2016年ジョエル・ビショッフ演出版に出演したアニーズの卒業」だ。ジョエル演出時代の衣裳や、タップキッズも見納めとなる。ジョエル演出版&山田演出版の両アニーズがガッツリ組んで同じ舞台に立つのも、最初で最後の貴重な機会だ。
劇場ロビー
「オープニング・トゥモロー(Tomorrow)」によって華々しく幕を開けた2017年クリコン。藤本隆宏が登場し、2016年孤児たち、ストリートチャイルド、タップキッズ、2017年孤児たち、ダンスキッズを紹介すると、それぞれがショートパフォーマンスによって役柄をアピール。そして2016年アニー役の池田葵、2017年アニー役の野村里桜・会百花が紹介された。
大人数の「ハードノックライフ(It's The Hard-Knock Life)」では、「ハニガンなんて、クソくらえ!」と、威勢よくキック! 2014年映画『ANNIE』キャストによるTVパフォーマンスを彷彿とさせるアレンジである。
次の「メイビー(Maybe)」では雰囲気が一転。3人のアニー(池田・野村・会)が、美しいハモりと輪唱を、しっとりとアカペラで聴かせた(本頁冒頭写真)。
「N.Y.C.」では藤本のソロに始まり、彩乃かなみが得意の高音を響かせる。ミュージカル『アニー』本編で大人キャストがつとめる「未来のスター」部分のソロを、今回のステージでは野村・池田・会が順に担当。堂々と歌い上げていくその姿! アニーたちが、これからスターになってゆくかのような演出に、実力で応えた。
「フリードレス(Fully Dressed Without A Smile)」では、ジョエル演出版の名物だった「タイタニック」(ダフィが最年少のモリーを肩車しながら、ケイトを持ち上げて、ぐるぐる回転させる)の大技も飛び出し、会場が、そして筆者が泣いた! 涙越しの2016年アニーズは、力を出し切って、いつもより多く回っているように見えた。
「2人でいればいい(I Don't Need Anything But You)」は、2017年アニーの野村・会と藤本がリズミカルに見せる。そこへ「2人といいつつ、3人でしたね」と笑いを取った2016年アニーの池田が、タップキッズを高らかに紹介する。「我らが誇る、2016の精鋭たち!」
今回のクリコンで2016年ジョエル演出時代のアニーズは卒業、タップキッズは見納めとなるわけだが、この「TAP!」パフォーマンスが大迫力で猛烈に良かった。素晴らしすぎた。会場はヒートアップ。筆者も存分に拍手!
3人のアニーを従えた、藤本による「この心を満たすのは(Something Was Missing)」では、三者三様のロマンチックな振付が心に残る。
続く「ダンサブル・トゥモロー(Tomorrow)」は、明るさが際立つアレンジ。「トゥモロー」がいかに名曲であるかを強く物語った。
彩乃による「すてきなホリデイ」は某フライドチキンCMソングとしておなじみの、クリスマス気分を盛り上げる選曲だ。宝塚出身の彩乃に合わせ、クリスマスリース型のシャンシャン(宝塚歌劇のフィナーレで出演者全員が持つ、鈴の音のなる小道具)で華を添えるタップキッズ&ダンスキッズ。さらに、出演者たちが元気よく「クリスマスメドレー(「Santa Claus is Coming to Town」「ママがサンタにキッスした」「All I Want for Christmas Is You」「Winter Wonderland」)」を披露、新旧アニーズのハーモニーを存分に響かせる。「Santa Claus is Coming to Town」の、第一声の迫力たるや! 「ジングルベル」ではアニーズのソロも多く、聴かせどころたっぷり。「きよしこの夜」では、ハンドベルも披露するなど多彩に見せる。
今回のクリコンは、とにかくアレンジが耳に心地よく、センス抜群(音楽監督:佐橋俊彦)。特にその手腕が発揮されたのが「We Wish You A Merry Christmas」。アイリッシュなアレンジとタップの融合が見事。アニーズも難しいアレンジや複雑な振付をビシッとキメて魅せる。
「クリスマスキャロル・メドレー(「もろびとこぞりて」「あめには栄え」「もみの木」「ひいらぎかざろう」「荒れ野にみ使い」)」は、キリスト教学校で10年以上を過ごした筆者のツボを直撃。「ひいらぎかざろう」は、ミュージカル『アニー』本編でもおなじみなので、思わず笑顔にさせられる。
クライマックスはジョン・レノンが1971年12月に発表した「ハッピークリスマス(Happy Xmas (War Is Over))」。この曲の発表された翌年の1972年から、雑誌「ザ・ニューヨーカーズ」のライターだったトーマス・ミーハンはミュージカル『アニー』の脚本執筆にとりかかった。当時、1960年代から続くベトナム戦争がひどく泥沼化していた(米軍がベトナムから全面撤退するのは1973年3月)。その時代の空気を、大恐慌時代の「1933年のアメリカ合衆国」に重ね合わせつつ紡いだ物語がミュージカル『アニー』だったことは既に本連載で述べたとおり(【第10回】参照)。そういえば、今年新演出『アニー』を担当した山田和也の手掛けた別のミュージカル『ドッグファイト』(2017年12月大阪・東京、2018年1月愛知にて再演)では、ベトナム戦争へのアメリカ介入の一端が描かれていた。そのベトナム戦争にジョン・レノンが異を唱え平和を希求して作ったクリスマスソングこそ「ハッピークリスマス(Happy Xmas (War Is Over))」だったのだ。
その曲が今回、藤本のリードボーカル&アニーズのコーラスで歌われた。客席に降り立って、キャンドルのライトを灯す。アメリカ合衆国では、ベトナム戦争から撤退した後も「二度と同じ過ちを繰り返さない」と、キャンドル集会が行われていたことは、成田美名子の漫画『CIPHER(サイファ)』でも描かれている。
「War is over, if you want it(戦争は終わるよ、あなたが望めば)」というメッセージは、今の世の中でも、いや、今の世の中にこそ、心に沁みわたる。
客席降りの「ハッピークリスマス(Happy Xmas (War Is Over))」。ちなみに筆者の眼前には久慈愛が!
ミーハンは、人々に希望を与える存在として、世の中の不安の中へ、アニーを降り立たせた。そして日本における32年間の『アニー』上演史において、たとえば1995年は、とりわけアニーが強く求められた年のひとつではなかっただろうか。あの1月17日、3月20日を超えて、私たちは生きなければならなかった。
その1995年にアニーを演じた水野貴以が、今回のゲストの一人目として登場した。続いて1997年シャーリー役・2001年ダフィ役を演じた清水彩花も現れ、水野と声を合わせる。篠崎光正演出時代から長年観劇している人々にとっては、フーバービル(連載【第4回】参照)の孤児(シャーリー、ジャネット、ポリー、アイリーン、シンシア)は懐かしいだろう。
そして最後に登場したゲストは、2006年アニー役の服部杏奈だ。このミュージカル界で活躍する『アニー』卒業生3人が歌ったのは「トゥモロー(Tomorrow)」英語バージョン。ワールドワイドに伝わる言語で、『アニー』卒業生3人が明日への希望を歌い上げる。憧れの先輩を見つめる池田・野村・会の、キラキラ輝く瞳。『アニー』のスピリットはこうして受け継がれてゆく。
さあ、いよいよフィナーレ。「アニーにもクリスマスソングがあります!」と藤本から紹介された曲はもちろん「ニューディール・フォー・クリスマス(New Deal For Christmas)」。
そしてお待ちかね、2018年アニーズが、舞台に集った!みんな、来年の『アニー』は任せたよ!!
2018アニーズ
いつの間にか、指揮の福田はじめオーケストラメンバーが、サンタ帽を被っているという、お茶目なサプライズ。会場全体での「トゥモロー(Tomorrow)」で、2017年クリコンの幕は閉じた。アニーズの元気な歌声に、弾む足取りで帰途についた筆者であった。
さて、当連載の今年の更新はこれでおしまい。来年もミュージカル『アニー』の記事を書いてゆきたいと思います。
2018年・犬年(サンディ・イヤー)も、どうぞよろしくお願いします!
文:ヨコウチ会長 写真:©NTV
■日時:
2017年12月22日(金)18:00開演
2017年12月23日(土・祝)12:00/15:00/18:00開演
■出演(※2016年・2017年はメモリアルも兼ねて<欠席者>も記載します):
藤本 隆宏 / 彩乃 かなみ
水野 貴以(1995年アニー役)、清水 彩花(1997年シャーリー役・2001年ダフィ役)、服部 杏奈(2006年アニー役)
アニー役:<河内 桃子>・池田 葵
モリー役:桑原 愛佳・池下 リリコ
ケイト役:竹田 雛乃・田中 樹音
テシー役: 松山 結香・池田 遙花
ペパー役:<高橋 舞音>・井福 杏寿
ジュライ役:河賀 陽菜・<山口 のん>
ダフィ役:影山 実奈・阿部 日菜子
大井 新生・古賀 雄大・清水 錬・楢原 蓮琉・羽賀 悠仁・
山本 紫遠・稲田 有梨・小野 瑠奈・上口 優香・久保田 由姫・徳増 夏帆・早坂 友花
アニー役:野村 里桜・会 百花
モリー役:小金 花奈・今村 貴空
ケイト役:林 咲樂・年友 紗良
テシー役:井上 碧・久慈 愛
ペパー役:小池 佑奈・吉田 天音
ジュライ役:笠井 日向・相澤 絵里菜
ダフィ役:宍野 凜々子・野村 愛梨
大川 正翔・大場 啓博・木下 湧仁・庄野 顕央・菅井 理久・吉田 陽紀・
今枝 桜・笠原 希々花・加藤 希果・久保田 遥・永利優妃・筒井 ちひろ・生田目 麗・古井 彩楽・宮﨑 友海・涌井 伶
アニー役:新井 夢乃・宮城 弥榮
モリー役:尾上 凜・島田 沙季
ケイト役:歌田 雛芽・込山 翔愛
テシー役:音地 美思・林 歩美
ペパー役:田中 樹音・武藤 光璃
ジュライ役:山下 琴菜・河﨑 千尋
ダフィ役:藤田 ひとみ・山本 樹里
ダンスキッズ:
大川 惺椰・大谷 紗蘭・大星 優輝・齊藤 芯希・平井 蒼大・山中 莉緒奈
東 未結・高橋 奈々・髙橋 有生・田中 愛純・廣瀬 奏空・宮原 咲心
構成・演出:小川美也子
音楽監督:佐橋俊彦
歌唱指導:青木さおり
振付:小山みゆき
タップ振付:藤井真梨子
タップ音楽協力:神尾修
舞台監督:廣田進
指揮:福田光太郎
■協賛:丸美屋食品
■協力:キョードー東京、アサツー ディ・ケイ
■2016年『アニー』関連
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2016年アニー役の河内桃子(こうちももこ)さん・池田葵(いけだあおい)さんにインタビュー
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サンディが33年目にして犬種チェンジ! 丸美屋食品ミュージカル『アニー』2018製作発表レポート
[第1回] あすは、アニーになろう
[第2回] アニーにとりつかれた者たちの「Tomorrow」(前編)
[第3回] アニーにとりつかれた者たちの「Tomorrow」(後編)
[第4回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その1>フーバービル~
[第5回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その2>閣僚はモブキャラにあらず!/span>
[第6回] アニーの情報戦略
[第7回] 『アニー』に「Tomorrow」はなかった?
[第8回] オープニングナンバーは●●●だった!
[第9回] 祝・復活 フーバービル! 新演出になったミュージカル『アニー』ゲネプロレポート
[第10回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その3>ラヂオの時間
[第11回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その4>飢えた人々を救え!
[第12回] 『アニー』がいた世界~1933年のアメリカ合衆国~ <その5>ウォーバックスにモデルがいた?
[第13回] ブラックすぎる!? 孤児院の実態
[第14回]ウォーバックスの財力と華麗なる元カノ遍歴
[第15回]Leapin' Lizards! リメイク映画『ANNIE』のトリビア<前編>
[第16回]Leapin' Lizards! リメイク映画『ANNIE』のトリビア<後編>
[第17回]ミュージカル『アニー』2018の主役&孤児役合格者、発表! 新アニー役は新井夢乃&宮城弥榮!
[第18回]決まったぞ~! ハニガン役に辺見えみり、グレース役に白羽ゆり!丸美屋食品ミュージカル『アニー』大人キャスト
[第19回]サンディが33年目にして犬種チェンジ! 丸美屋食品ミュージカル『アニー』
[第20回]新旧演出版のアニーたちが最後の共演!「丸美屋食品ミュージカル『アニー』クリスマスコンサート2017」レポート
[第21回]『アニー』劇中 人名&用語辞典<前編>
[第22回]『アニー』劇中 人名&用語辞典<後編>
[第23回]パワーアップする2018年『アニー』~演出の山田和也にインタビュー
【東京公演】
■日程:2018年4月21日(土)~5月7日(月)
■会場:新国立劇場 中劇場
■料金:全席指定8,500円
※4月23日(月)・24日(火)は特別料金「スマイルDAY」全席指定6,500円
※4月25日(水)13時公演 / 17時公演は「わくわくDAY」
(観客全員に『アニーのくるくるウィッグ』『オリジナルエプロン』『非売品バッジつきミニバッグ』『キャップ』の中から1点をもれなくプレゼント)
■日程:2018年8月4日(土)~8月5日(日)
■会場:福岡市民会館
■日程:2018年8月9日(木)~8月14日(火)
■会場:シアター・ドラマシティ
■日程:2018年8月26日(日)
■会場:新潟テルサ
■日程:2018年8月31日(金)~9月2日(日)
■会場:日本特殊陶業市民会館
アニー:新井 夢乃 / 宮城 弥榮
ウォーバックス:藤本隆宏
ハニガン:辺見えみり
グレース:白羽ゆり
ルースター:青柳塁斗
リリー:山本紗也加
ローズベルト大統領:伊藤俊彦
女性アンサンブル:岩﨑ルリ子、神谷玲花、川井美奈子、坂口杏奈
アニー役:新井 夢乃 (アライ ユメノ)
モリー役:尾上 凜 (オノエ リン)
ケイト役:歌田 雛芽 (ウタダ ヒナメ)
テシー役:音地 美思 (オンジ ココロ)
ペパー役:田中 樹音 (タナカ ジュノン)
ジュライ役:山下 琴菜 (ヤマシタ コトナ)
ダフィ役:藤田 ひとみ (フジタ ヒトミ)
大川 惺椰 (オオカワ セイヤ)
大谷 紗蘭 (オオタニ サラ)
大星 優輝 (オオホシ ユウキ)
齊藤 芯希 (サイトウ シキ)
平井 蒼大 (ヒライ ソウタ)
山中 莉緒奈 (ヤマナカ リオナ)
アニー役:宮城 弥榮 (ミヤギ ヤエ)
モリー役:島田 沙季 (シマダ サキ)
ケイト役:込山 翔愛 (コミヤマ トア)
テシー役:林 歩美 (ハヤシ アユミ)
ペパー役:武藤 光璃 (ムトウ ヒカリ)
ジュライ役:河﨑 千尋 (カワサキ チヒロ)
ダフィ役:山本 樹里 (ヤマモト ジュリイ)
東 未結 (アヅマ ミウ)
高橋 奈々 (タカハシ ナナ)
髙橋 有生 (タカハシ ユイ)
田中 愛純 (タナカ アズミ)
廣瀬 奏空 (ヒロセ ソラ)
宮原 咲心 (ミヤハラ ニコ)
■協賛:丸美屋食品工業株式会社